PROJECT STORY

プロジェクトストーリー

トイレットロールの常識を覆した
品質を保ちながらの3倍長持ち化

3倍長持ちトイレットロール開発・販売プロジェクト

introduction

ドラッグストアやスーパーでよく見かけるようになった長尺化したトイレットロール。その先駆けとなったのが“スコッティ長持ちロール”です。それまでの1ロール25メートル(ダブル)の長さから品質を変えずに3倍の1ロール75メートルへ。企画が持ち上がってから世の中へ出るまでの2年半におよぶ開発は、長期間に及ぶものでした。
現在、長持ちロールは、当社のトイレットロールの主力商品となりましたが、商品開発の苦労に加え、商品展開についても長持ち化のメリットを市場に受け入れてもらうために工夫を重ねてきました。消費者、流通業界、メーカー、環境などにメリットをもたらす「四方良し」のトイレットロールの長持ち化は業界にとって大きな転換点となりました。

ここがポイント

  • 品質を落とさずに3倍の長さへ
  • 長持ちロールへの理解を得るための戦略
  • 横連携で成し遂げたプロジェクト

インデックス

メンバー

  • 開発本部 商品開発部 課長
    (2005年〜日本製紙/2012年〜日本製紙クレシア)
    大岡 康伸

  • マーケティング総合企画本部 マーケティング部 主任
    (2019年中途入社)
    齊藤 雄太

  • ファミリーケア&パーソナルケア営業本部 首都圏FC・PC営業1部 営業主任
    (2018年入社)
    大家 千瑛

Story.1

かさばるトイレットロールの課題改善が生んだ
多方面へのメリットを持つ長持ちロール

― プロジェクト発足当時はどのような状況だったのでしょうか?また、プロジェクトにおける役割を教えてください。

齊藤:長持ちロール以前のトイレットロールの長さは1ロール25メートル(ダブル)。その12ロール入りのパックが定番化しており、サイズも大きく、物流効率もよくありませんでした。「かさばる」ということのデメリットが大きく、そのような状態ではいつか限界がくると当時の経営トップが先頭に立ち、長持ちトイレットロールをスタンダード化するためのプロジェクトがスタートしました。
そして本プロジェクトではマーケティングとして必要な社内やお客様とのコミュニケーション、販売戦略の立案などを担当しました。

大岡:商品開発として商品設計を行いました。

大家:長持ちロール化に合わせて、代理店への理解をいただくと共に、販売店バイヤーへの提案・賛同と消費者へのアピール・拡販方法の提案を担当しました。

― 通常ロールの生産を止め3倍長持ち化をしたメリットはどのようなところでしょうか?

齊藤:長持ちロール化のメリットはたくさんあります。まず、消費者にとっては、通常の12ロールが約1/3のサイズになるので、買い物が楽になり、収納スペースも少なくて済みます。そして取り換える回数が減り、ロールの中芯やパッケージも含めゴミの量も削減されます。販売する店舗は売り場に今までよりも多くの商品を置くことができ、欠品もしにくくなります。また、品出しの回数が減り、倉庫でも場所を取りません。物流面では一度に運ぶ量が増え物流効率が向上し、トラックのCO2排出量の削減にもつながる環境商品です。
記憶にも新しいかと思いますが、コロナ禍においてトイレットロールが一時市場から消えたことがありましたが、その原因の一つは、トイレットロールがかさばり、一度にたくさん運べなかったことでした。長持ちロール化はさまざまな方向でメリットが大きく、それらを踏まえて、当社では2021年の3月に通常ロールの生産をやめ、長持ちロールに完全にシフトしています。

Story.2

品質を保ちながらJIS規格にあった径に
困難を極めた2年半に及んだ開発

― それだけ多くのメリットがありながら、今までこのような商品がなかったということは、実現に当たって技術的に相当難しいということですよね?

大岡:トイレットロールの径はJIS規格で決められています。長く巻けば巻くほど当然径が大きくなりますから、トイレットロールのホルダーに収まらなくなります。求められたのは、品質を保ったままホルダーに収まるサイズで、通常ロールの3倍の長さ(ダブルで75メートル)にすることでした。当時は突拍子もない目標を突きつけられた感じがしましたね。試作品を作り始め、品質を保持しながら巻こうとすれば、ホルダーに収まるサイズにできず、サイズをクリアしようとすれば使い心地が良くない。マーケティング部門に持っていっては「これではダメです」と何度も突き返されました。そのやりとりを工場含めて何度も繰り返しました。結局市場に送り出すまで2年半もかかりました。クレシアの歴史においてここまで時間をかけて開発を行ったのは初めてでした。

― どのように3倍長持ちの長尺化の課題を解決していったのでしょうか?

大岡:吸水性や心地よさを保つために紙の量を減らすことはせず、紙の密度から検討し直すことが必要でした。紙を抄く段階で繊維間の空気を減らし、密度を高めていくことから取り組みました。そして、やわらかさのためのエンボス加工の凹凸、そして凹凸をつぶさずにきっちりとロール状にする巻き加減の絶妙なバランスを探っていったのです。今までの当社の歴史があってこその技術だと思っています。最終的に今の品質にたどり着くまで時間がかかりました。工場では既存の機械を調整・改造し、それだけでは足らず新規の機械も導入しました。実機での開発テストに協力してくれた関係部門にも感謝しています。

Story.3

コンセプトブックやパッケージ、TVCMまで
長持ちロール定着のために力を注いだPR活動

― 長持ちロールの完成後、販売で苦労されたことは?

齊藤:実は長持ちロールの販売に対して社内で懐疑的な空気がありました。それまで通常の12ロールを当たり前のように売っていた営業にとっては、長持ちロール化して、見た目の量が減ることで、「値上げしたのではないか」とお客様に思われ、敬遠されることが心配だったようです。そのため、まず社内に向けてのセールス資料はもちろん、社員に長持ちロール化の意義を伝えるコンセプトブックも作りました。

大家:営業は消費者に一番近い立場なので「消費者目線で見たときに3倍巻きは受け入れてもらえるのだろうか」と最初は思いましたね。しかし、資料を読み、実際に使ってみたところ、品質にも問題なく、長持ちロールの便利さ、良さを理解でき、それらをもとにお取引先の方に説明していきました。やはり自分で使ってみて納得できる商品かどうかというのは営業にとっては大事なんです。

― 長持ちロール周知のためにどのような点に力を入れたのでしょうか?

齊藤:新聞広告を始めTVCMやSNSなどを用い、多くの消費者の方とコミュニケーションを実施しました。更に売り場では、キャンペーンを展開する事で購入の後押しを行いました。また、商品パッケージも今までの12ロール分がこの4ロールに入っているということを訴えかけるように工夫しました。一つの商品の広報にここまで力を入れることも初めてでしたね。

大家:店舗によって商品のPOP設置があったりなかったりするのですが、今回のパッケージでは側面に4ロールで12ロール分だということが明記され、パッケージ横面も目を引くデザインになっていたので、店頭に置くだけで商品が自らを宣伝するような形になっています。それから店頭でスコッティの商品を購入していただいた方には1ロールサンプルをお渡ししたり、通常ロールと変わらない品質であることを理解してもらうために、商品に触っていただいたりしています。最近では店頭でお客様から「これ便利よね」と言っていただくような嬉しいことも増えています。

Story.4

特許取得にもつながった
社内のコミュニケーション力

― 特許もたくさん取られたようですが何が成功の秘訣でしょうか?

大岡:社内での連携がうまくいったことだと思います。プロジェクトには多くの部署が関わることになりますが、どの部署ともコミュニケーションをしっかり取っていたので、業界の中でいち早く長尺化ができたと思っています。そのため、3倍長持ちロールは多くの特許を取ることができ、結果的に他社には真似できない商品となりました。
特に、開発中は工場で繰り返しテストを行ってきました。工場との連携なしにはこのプロジェクトは成し得なかったと思っています。

Story.5

「長持ちロールといえばスコッティ」
その実現へ向けて

― プロジェクトに取り組みいかがでしたか?

大岡:本当に実現できるのかと思ったほど難易度が高いプロジェクトでした。この開発を経験したことで、今後新たな課題が出たときも乗り越えられるんじゃないかと思います。長持ちロール発売後、順調に販売数も伸び、主力商品になっていることが嬉しいですね。

齊藤:長持ちロールをお買い上げいただき、持って歩いている方を街で見かけると、多くの部署の方と一緒にこの商品を作り上げたことを思い感無量になります。現在は他社も長尺化したものを出すようになってきていますので、商品にどう付加価値をつけられるかが重要だと考えています。先頭を走って開発してきたものとして「長持ちロールといえばスコッティ」と思っていただけるように、これからも努力を続けていきたいと思います。

大家:当社にはいろいろな商品がある中で、長持ちロールは最高の商品の一つです。自信を持って営業活動を行っています。そして、私たち営業は店頭でお客様の声を聞くことができる立場なので、お聞かせいただいたご意見を社内で共有し、より良い商品開発に生かすことができればと思っています。

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